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G: h. 122cm | H: h. 106cm |
ムムイェ族の生活は農耕と山羊の牧畜を中心に営まれ、血縁関係から成り長老に指導され る小集落が生活の基盤になっています。日常生活のリズムや規律は伝統的な儀式で司どら れ、生まれてから死ぬまでの一生も節目節目を儀式により通過して行きます。これらの儀式 には祖先の霊的な力を象徴する仮面が主要な役割を果たす一方、彫像は小集落の聖堂や 有力者の住居に置かれて占い、病気の治療、雨乞い、呪い、収穫や戦勝の祈願などの呪術 的な目的に用いられたようです。 また、各家庭に保存されてきた比較的小型(20〜40cm)の彫像(J、K、L、Mなど)は、身 近の死者を追悼するために彫られたもの(位牌代わり?)という説もあります。いずれにして も、呪術用の彫像は精霊(祖先の霊と混在しているのかもしれません)のイメージを形どった ものと考えられますが、彫像といえば一般に人間や動物を写実的に彫った作品が多い中で、 ムムイェの木彫は極度に単純化された顔(写真のGの顔などは、まるで嘴のような輪郭だけ で、目、鼻、口は省略されてしまっています)、筒状の長い胴体、ねじれた腕、台のような下半 身など、人間にも動物にも似つかず、アフリカの原野に住み人間を超えた超自然的な能力を 持つ精霊を、鋭敏な感性でイメージ化すると正にこうなるのかというひとつのモデルとして非 常に興味深いものがあるのです。 ここでご紹介している木彫のそれぞれが、ムムイェの人たちの祈りにどのような役割を果た していたのかは判りませんが、例えばDは戦いに際して勝利を祈るのにふさわしい力強さを 持っており、Aからはなにか判りませんが病気の治療から呪いまで広く強い呪術力を持ってい るようなオーラを感じます。それに対してFやH、Iからは快適な日常生活にかかわる祈りをか なえてくれるような身近さが感じられます。 またFは、極端に小さい顔に、キリの先で無造作につついたような目鼻口しかついていない 単純化された顔ですが、像全体からは威厳のようなものさえ感じられ、敬虔な祈りの対象で あったことがうかがわれます。 |
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