2.アフリカの彫像                                                                                                                                                            
 
C:  h. 102cm 
 D: h. 156cm
                                                  
 特に、木彫りの大型の彫像は、かさばって重いものを運んでこなければならないので、日本でアフリカの彫像の実物を見かける機会はあまりありません。同じ木彫りでも、マスク(仮面)は木像ほど重くはありませんが、アフリカのマスクは冒険映画で見かけるような不気味な顔をしたものが少なくないので、必ずしも日本人好みではないかもしれません(実際には、なかなかノーブルで立派なものもあるのですがー「付録-アフリカの仮面」ご参照)。彫像も一般的には呪術師が助力を祈る霊的な存在や、天災や外敵から部族を守ってくれる守護神などとして彫られたものが多く、同じ部族の人にしかわからない意味合いのものも少なくないので、人類に普遍的な美しさを究極まで追求したギリシャ彫刻などとはかなり違っていて、初めは(最後まで?)なかなか取っつきにくいと言う人も少なくありません。
 私がナイジェリアの隣国カメルーンに滞在中に集め、ここでご紹介するムムイェの彫像も、恐らくムムイェ族の信じる精霊たちの姿を彫ったものだと思いますが、アフリカの彫刻にしては不気味さよりも愛嬌さえ感じられる上、比較的単純な造形にもかかわらず、見る者をグイグイと惹きつける芸術性あるいは精神性も持っているように思われます。
 それは多 分 、ごく最近まで外の世界と隔絶して生活してきたために、私たちの祖先が科学的思考法を身につけるのに伴って消えていった神々や精霊たちの存在を、ムムイェの人たちは直観ないしインスピレーション(霊感)によってイメージ化する感性を未だに保持し、同時にそのイメージを、木材という素材を使って目に見える姿に彫り上げる造形力に恵まれていたことによるもので、ムムイェの人たちがこうした直観力と造形力をあわせ備えていたことが、その木彫にユニークな芸術性を与えること になった要因なのでしょう。
 まだまだ自 然との関わりが比較的に大きい日常生活 の中で、私たちの祖先もかつてはムムイェの人たちと同じように向かい合っていたかもしれない自然の素晴らしさや、精霊など 自然の中に潜んでいると想像される目に見えないものの存在を生き生きと直観し、それを感じたままに音や絵や彫刻などの形に表しているのが、ムムイェの人たちほどは昔ながらの直観力を保持していないかもしれないとはいえ、アフリカ各地の伝統的な芸術が今も伝える共通の特徴と言うことができるのではないでしょうか。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
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