2008/05/10

リアリティの追求

ピアノの方はお気楽にやりたいので、以下のことはあまり意識していません。


オケにいた頃は、曲のリアリティを大切にしていました。
曲想を頭で理解できても、それを音色で表すのはまた別の問題です。
しかしながら単に技量だけあっても聴衆の頭の中にリアルな情景を浮かべさせることはできません。

で、どうするかというと比喩を使います。
優れた指揮者は巧みな比喩で楽譜の個々の短いフレーズを言い換えることでオケのメンバに曲想を伝えます。
例えば「さらっと流すのではなく重いものをゆっくりと動かすように。」とか、
「ここは愛する人の髪をそっとなぜるように優しく弾いてください。」等。
気がついたのですが、人間の所作になぞらえるのがポイントだと思います。
もし単に「嵐のように」、「流れる水のように」のようにやや抽象的な比喩ではどう演奏してよいやらわかりませせんよね。

Tutti(合奏)の際はこれらの比喩を逐一記憶することに加えて、日頃 テープを聴いている時は自分なりの比喩を
編み出して、Tuttiの時にその情景をイメージしながら(あるいはその感情を思い起こしながら)演奏するのです。
Tuttiでは他の楽器と合わせる練習は当たり前で、回を重ねるごとにイメージの改良を重ねて、本番ではベストのイメージで
演奏することが、Tuttiのもう1つの目的です。

そんなプロセスを経ての本番の演奏では、演奏者は頭の中に明確な曲のイメージを次々と浮かべつつ音色を奏でるので、
聴衆にとっては、音色を聴いただけであたかも目の前に作曲家の描いた情景や感情が現れるかの如くリアルな感動を得られるのです。